なかざわひでゆき

なかざわひでゆき

略歴: 日本大学芸術学部映画学科卒、同学部大学院卒。映画・海外ドラマのライターとしてキャリア30年。TVガイド誌やオンライン情報サイトなどを中心に幅広く執筆活動中。雑誌「スカパー!TVガイドBS+CS」(東京ニュース通信社刊)で15年続くコラム“映画女優LOVE”をはじめ各テレビガイド誌で特集記事やコラムを執筆。著書は「ホラー映画クロニクル」(扶桑社刊)、「アメリカンTVドラマ50年」(共同通信社刊)など。海外取材経験も多数。旧ソ連のモスクワ育ち。

近況: 目下のところBabyMonsterとTXTにドハマリ中。まさか高校生の姪っ子と推しが被ることになるとは…(^^;

サイト: http://eiga3mai.exblog.jp/

なかざわひでゆき さんの映画短評

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  • 関心領域
    美しくも不穏で背筋の凍る映画
    ★★★★

     それは、プール付きの広い屋敷に暮らす仲睦まじい一家の幸福で満ち足りた生活風景。だが、やがて観客は彼らが悪名高きアウシュビッツ所長ルドルフ・ヘスとその家族であり、屋敷の塀の向こう側がユダヤ人強制収容所であることを知る。その姿は、どこにでもいる善良な人々。子供たちへありったけの愛情を注ぐ大人たちだが、しかしママ友らはユダヤ人から奪った贅沢品の話題で盛り上がり、夫らは書斎で大勢のユダヤ人を効率良く最終処理する方法を話し合う。当たり前のように。彼らの平和な日常を支える圧倒的な偽善と無関心、時として唐突に頭をもたげる心の闇、そして終始聞こえてくる収容所からの「音」。美しくも不穏で背筋の凍る映画だ。

  • ナイトメア/夢魔の棲む家
    女性の自己決定権を巡る抑圧を投影した北欧ホラー
    ★★★★★

     事故物件のアパートを安く購入した若いカップル。ところが、そこには北欧神話の邪悪な夢魔メアが棲みついており、カップルの女性を夢の中で妊娠させ、自らが赤ん坊となって世へ出ようと画策していた…!というノルウェー産ホラー。薄気味悪い住人や奇妙な現象に悩まされ、望まぬ妊娠に怯える前半は『ローズマリーの赤ちゃん』、夢魔メアと対決するため夢の中へ飛び込んでいく後半は『エルム街の悪夢』へのオマージュといった感じで、女性の自己決定権を巡る社会的な抑圧を投影した筋書きはなかなか興味深い。ただ、そのテーマが十分に消化しきれているとは言い難く、いまひとつ釈然としないラストのオチも少々惜しい。

  • PS1 黄金の河
    インド映画らしい豪華絢爛&激熱な歴史スペクタクル超大作!
    ★★★★

     インドの国民的な歴史大河小説を原作に、10世紀チョーラ王朝の王位継承問題を巡る陰謀と裏切りと愛憎を前後編で描いた、絢爛豪華な歴史絵巻のパート1。インド版『ゲーム・オブ・スローンズ』とも呼ばれているようだが、同時にシェイクスピアの歴史劇を彷彿とさせる要素も多い。様々な勢力の思惑が複雑に絡まるパワーゲームの面白さも然ることながら、インド各地の古代遺跡でロケされた映像の神秘的な美しさ、戦場バトルから海洋パニックまでテンコ盛りの超スペクタクルなアクション、そしてインド映画お馴染みのミュージカルと見どころは尽きず。実際に政情を動かしていくのは有能な女性や家臣たち…という視点も極めて今日的と言えよう。

  • ジョン・レノン 失われた週末
    あの時代を生きたアジア系移民女性の記録としても興味深い
    ★★★★

     ジョン・レノンとオノ・ヨーコが別居していた18カ月間に何があったのか。ヨーコ公認の「恋人」として、ジョンと一緒に過ごした個人秘書メイ・パンの証言を中心に振り返るドキュメンタリーだ。芸能スキャンダルの裏側を垣間見る面白さも然ることながら、リベラル革命の時代を駆け抜けたアジア系移民女性の半生の記録としても実に興味深い。祖国の伝統に縛られた移民一世の父親に反発し、保守的な古き良きアメリカにも中指を立てたスラム街出身の中国系女性が、自由な空気と己の直感に突き動かされて音楽業界へ身を投じ、時代の最前線を目の当たりにしていく。その軽やかさと柔軟さ。ヨーコとは違う種類の強さをジョンは愛したのかもしれない。

  • 猿の惑星/キングダム
    世界の今を映し出すSF冒険アクション
    ★★★★

     『猿の惑星』新3部作の第1弾。前作から300年後、人間が野生へ退化して猿が地上の支配者となり、かつて人類が文明を築いたことすら半ば忘れられた世界。過去の歴史を自分に都合良く修正し、英雄シーザーの遺した言葉を歪曲することで自らを神格化した独裁者が台頭する中、故郷の村を破壊された若き猿ノアは言葉を喋る人間の女性ノヴァの力を借り、連れ去られた家族や仲間を救うため独裁者と対峙する。分断と対立、融和と理解を描いたストーリーは、まさしく現実社会の写し鏡。そのうえで、歴史修正主義に警鐘を鳴らし歴史の教訓に学ぶことの重要性を説く。もちろん、無垢な若者の成長を軸としたSF冒険アクションとしても良く出来ている。

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